忘れられない人がいる。
うちの爺ちゃんの友達。良く爺ちゃんと2人でお酒を酌み交わしていた。
「この外国人 日本語上手いなぁ…。日本人みたいだ」
友達が帰った後に爺ちゃんは教えてくれた。
「あのな、アレは吹き替えだ」って…
爺ちゃんの友達は文字や数字が読めなかった。
ある日、爺ちゃんといつものようにお酒を酌み交わした友達は言った。
「おっ!そろそろ帰る時間だな。遅くまで悪かった!」
友達が帰った後に爺ちゃんは教えてくれた。
「あのな、今、アイツが見てたのは温度計だ」って…
爺ちゃんの友達は三味線が趣味だった。ある日、爺ちゃんといつものようにお酒を酌み交わした友達は言った。
「三味線弾いてやるぞ。子供たちも呼んで来い」
はじめての三味線だ。どんな音色なんだろう…僕は少し緊張して演奏を待った。
「べべんべん。べん。べべん。べん。べべん。べーん。はっ!べんべべん。はっ!」
口だった。全力で口でべんべん言っていた。はっ!と言う時に目をカッと開くのが怖かった。
友達が帰った後に爺ちゃんは教えてくれた。
「あのな、本当の三味線は弾くもの」だって…
文字が読めなくても、数字が読めなくても…人としての魅力に溢れる人だった。
あんな笑顔で楽しそうに…無邪気に生きれる大人って素敵だと思う。
きっと天国で今頃、爺ちゃんに三味線聞かせているんだろうなぁ。
「べべんべん。べん。べべん。べん。べべん。べーん。はっ!べんべべん。はっ!」