「カボチャの語源はカンボジアだよ!」という情報くらいに既にご存じの方もおられましょうが… 私が産まれた家ではテレビがまともに映らなかった。
※ 気になる人はblogのアンテナを読んでみよう♬
中学生になった時にクラスのみんなが「昨日、月9観た?」と盛り上がっている時、「あ~、ゲツクね…観たよ。凄かったね!」と言いながら、頭の中では「ゲツクとは何ぞや? スポーツか…芸人か…はたまた番組名か?…」と自問自答を繰り返すのである。まるで暗闇の中で未知の敵と戦っているかのような日々を通して、僕は「分かるわぁ、分かる!」で大抵の会話は乗り越えられることを知った。
さて、中学生の頃といえば、自意識が芽生え、格好をつけたくて仕方がないお年頃…
ある日、「負けた奴がジュースを奢る」というゲームをしていた。
結果、クラスメートの直也がゲームに負け、みんなにジュースを奢ることになった。
「何飲みたい?俺、買ってくるよ」 コーラ、オレンジ、リンゴジュース…
思い思いに直也に注文するみんな…
ここで僕の格好つけたい気持ちが全面に出てしまった。
直也が尋ねる。「タケシは何にする?」
「俺?…俺はそうだな…コーヒーが良い。ゲオルギアの缶コーヒーが良いな!」
「何? ゲオルギアの缶コーヒー? そんなのあったっけ?」
「あるよ!前に自販機で見たもん。家のお父さん買ってきて、家で良く飲んでるし…」
「分かったよ。まぁ、行ってくるわ」
直也が自販機に向かって走り出した。
しばらくして直也が戻ってきた。
「タケシ。コーヒーなんだけど、ゲオルギアなんて無かったよ。これしか無かった」
そう言って直也が渡してきた缶コーヒーはゲオルギアだった。
全力で格好つけて、僕は言った。
「直也。ありがとう。これだよ!これ。美味しいんだよ。ゲオルギア」
「えっ…それ…ジョージアだよ!」
「ジョ…ジョ…ジョージア!?…知らなかった。テレビでCMとか観たことなかったから…」 心の中で呟きながら…恥ずかしさで顔を真っ赤にさせて僕は言った。
「分かるわぁ…分かる!」
この日、僕はこの世に「分かるわぁ…分かる!」では絶対に乗り越えられない会話があることを知った。
あれから数十年…僕は知らないことを知らないと言えるそんな大人になれただろうか?