きのみきのまま なすがまま

楽しもうと思わなきゃ楽しくないよ

普通とはなんだろう

ある朝、急に動けなくなった。

 

腰から下に力が入らない。足が全く動かない…

 

救急車を呼んだ。診断は椎間板ヘルニア

 

入院してしばらくするとおしっこが出にくくなってきた。

 

ヘルニアが悪化し、排尿障害が生じていた。

 

「このまま尿が出にくければ、尿道からカテーテルを入れておしっこを出しましょう。回復すればカテーテルを抜く。回復しなければ手術も検討が必要です」と主治医から説明があった。

 

その夜、看護師さんが部屋にやってきた。

 

尿道カテーテルの挿入について何か質問はありますか?」

 

「やっぱり怖いですね。痛いのかな…それと、どっちの穴に挿れるんですか?カテーテル上の穴ですか?下の穴ですか?

 

「えっ?なんですか?」

 

「いや…どっちの穴なのかな?って…上の穴ですか?下の穴ですか?

 

「えっ?…」

 

「おいおい…看護師さんを困らせるなよ。何を言ってるのよ?」

同じ病室で仲良くなった社長が話しかけてきた。

 

「いや…社長。真面目な話しですよ。尿道ってどっちの穴なのかな?って思って…」

 

「おいおい…何言ってんのよ? 尿道も何もチンチンには穴一つしかないでしょ?

 

その時、主治医の川上先生が病室に入ってきた。

 

「タケシくん。ちょっと別室で話をしようか?」

 

別室で先生は話し始めた。

 

「タケシくん。あのね…普通はね、尿道はひとつなんだ。でも、君は2つ穴が開いている。重複尿道っていう病気なんだよね」

 

「えっ…先生…僕、今までどっちかがおしっこで…どっちかが精子かと思ってました」

 

「違うんだよ。普通はチンチンの穴は1つなんだよ。まぁ、片方は繋がっていないし、気にしなくて大丈夫だよ」

 

「そうですか…でも、先生…この機会にどっちの穴がちゃんとした穴なのか教えてください」

 

「タケシくんは下の穴だね。まぁ、気になるなら家族にだけは伝えておけば良いんじゃないかな?今後、万が一、カテーテルを挿入する時に病院に伝えると良いだろうし…」

 

「分かりました…」

 

翌日、病室に来た父親に伝えることにした僕は真剣なトーンで話し始めた。

 

「お父さん。驚かないで聞いて欲しい。俺、チンチンに穴が二個あるんだ。今までみんな穴が二個開いていると思っていて…でも、機能的には何も問題ないから…」

 

「すげぇな。タケシ。無いよりあった方が良いぞ。お金も出会いもチンコの穴も」

 

「う…うん。お父さん。それでね、一応、お父さんには伝えておくけどさ。俺、下の穴がちゃんとした尿道だからさ。紙に書いておいて欲しい。万が一の時さ、すぐに分かるように…」

 

「おぅ!任せとけ!」そして、父親は床頭台にあったメモ帳を手に取った。

 

「でも、アレだな。これ、文字で書いても良く分からないだろうから。絵で描いておくわ!」

 

そう言って父親が返った後に床頭台に残されたメモには

 

 

と書かれていた。

 

「これ…ウーパールーパーみたい…。お父さん…縦だよ、縦…穴は縦…

 

そう呟いて、僕はメモを捨てた。

 

当たり前なんてことはない。

 

普通だなんて誰が決めた?

 

あなたの常識は誰かの非常識かも知れない。

 

常識を疑え。当たり前を疑え。普通を疑え。

 

あなたの真実を探すんだ。