あるお宅でお昼ご飯に誘われた。
「ちょうど新米が取れたので…何もないけど、おにぎりと味噌汁でもどうぞ」
腰の曲がった婆ちゃんが台所で一生懸命料理をしてくれた。
雪みたいに真っ白な新米から立ち上る湯気。
「いただきます!」
「新米を味わって欲しくて…具は入れてないよ」と笑顔の婆ちゃん。
「いやぁ…婆ちゃん。これ、美味しいわ。やっぱり米が違うね!」
「あら、本当? 喜んでくれて私も嬉しいわ。まだおかわりもあるよ!」
「それと、婆ちゃん。これ、塩加減がちょうど良い。これ、塩も良い塩を使ってるね!
この塩の感じは…そうだ!岩塩とかかな?」
婆ちゃんは言った。
「えっ? 塩? 塩なんてつけてないよ。それ、米だけ」
するとなんだ、おい。この塩辛さはなんなんだ。
完全に…しっかりと…しょっぱいんだよ。
今や新米の旨さより、この塩分が気になってどうしようもないじゃないか。
もしやこれは婆さんの手の塩なのか? ミネラル豊富なやつなのか?
そういう方向性で握っている婆さんなのか?
いや…むしろこの婆さんはミネラル婆さんなのか?
色々な思いが頭の中を駆け巡り…ふと横を見ると爺ちゃんが小竹のサンドパンを牛乳で流し込んでいた。
「うめぇなぁ。サンドパン!牛乳と合う!」
「間違いないよ」と僕は呟いた。 そんなある秋の日の思い出。