きのみきのまま なすがまま

楽しもうと思わなきゃ楽しくないよ

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

婆ちゃんはとにかくせっかちで気が短かった。 今でも思い出される姿がある。 朝、起きると婆ちゃんが下着姿に紫のはんてんだけを羽織り、畑を走り回りながら水やりをしていた。 「起きるのが遅くなってしまった。朝飯前に水やりをしなくちゃ」と言い、髪を振…

遺言

爺ちゃんは病室に誰もいないことを確認して、私にそっと耳打ちをした。 「良いか? ケツのあったかい女は抱くな! 病気を持ってるぞ!」 数日後、爺ちゃんは静かに息を引き取った。 今でも思い出す。 爺ちゃんの遺言。 あれは爺ちゃんの過去の経験から生み出…

選挙

私の父親は、その昔、村議会議員選挙に立候補した。 熱を帯びる選挙活動。1票が勝敗を分ける熱い戦い。 選挙活動のさなか、爺ちゃんの友達が家に来てこう言った。 「よし! 俺も1票入れるよ!」 だが、爺ちゃんの友達は字が書けなかった。 選挙当日、爺ち…

はじまり

「お母さーん。おーい。お母さーん。冷蔵庫にチーズあったろ?」 「えっ? なに? お父さん… チーズ? チーズならあるけど…」 「ちょっと急いで持ってきてくれないか?」 「なに? どうしたの? はい。これ、チーズだけど…」 「いや、ほら…チクワなんだけど…

おにぎり

あるお宅でお昼ご飯に誘われた。 「ちょうど新米が取れたので…何もないけど、おにぎりと味噌汁でもどうぞ」 腰の曲がった婆ちゃんが台所で一生懸命料理をしてくれた。 雪みたいに真っ白な新米から立ち上る湯気。 「いただきます!」 「新米を味わって欲しく…

爺ちゃんの友達

忘れられない人がいる。 うちの爺ちゃんの友達。良く爺ちゃんと2人でお酒を酌み交わしていた。 「この外国人 日本語上手いなぁ…。日本人みたいだ」 友達が帰った後に爺ちゃんは教えてくれた。 「あのな、アレは吹き替えだ」って… 爺ちゃんの友達は文字や数…