きのみきのまま なすがまま

楽しもうと思わなきゃ楽しくないよ

火事

忘れもしないあの日のことは…忘れようと思っても忘れられないあの日。 あの日、僕は仕事終わりにヤマダ電機で携帯のワイヤレス充電器を買っていた。 どれにしようかと迷っている時に携帯が鳴った。 友達からの電話だった。 「もしもし、燃えてるよ!火事。今…

人造人間

その日は会社の飲み会だった。 そろそろお開きになろうかという時、久しぶりに地元の友人から電話がかかってきた。 「タケシ。久しぶり。突然、電話してごめん。あのさ…今日、お前の親父の旅館で飲み会だったんだけど…ちょっと気になることあって…電話したん…

トイレ

我が家には和式トイレしかなかった。 僕が中学生の頃、トイレを改装することになったが、父親と母親に意見の対立が生じていた。 母親は洋式トイレにしたいと主張する。僕も妹も洋式トイレに賛成した。 しかし、父親は「洋式トイレだとウンコが出ない。男は黙…

観光地

それは高校一年の夏休みの朝だった。 「あれ?…お父さんは?」 いつもなら腹を空かせた牛が牧草を貪り食うような勢いで朝食を食べているはずの父親の姿がない。 「なんかね…明け方に山に行くって言って…まだ帰ってこないのよ。何かあったんじゃないかと…」と…

商売の基本

書道家に字を褒められた父親は旅館の至る所に字を書き、貼り出し始めた。 「タケシ!どうだ!この言葉。凄いだろ?深いだろ?」 あたかも自分で思いついた名言のように話すが、これは新選組の近藤勇の言葉だった。 「お父さん。ダメだよ!これ、パクリでしょ…

はみ出しちゃう

父親は旅館に勤めていた。 旅館とは言うが、食堂はあるわ、冠婚葬祭や法事は行うわ、飲み会も…そして、食材や洗剤なども売っている商店みないな店も併設していた。 そして、この謎の旅館で父親の肩書は調理師だったが、仕入れから調理、バスでの送迎、冠婚葬…

ファーストフード

僕らは初めて産まれたんだ。 だから、失敗なんて当たり前。どんなことにも「はじめて」はあるんだ。 僕と父親は2人で買い物に出掛けた。その日は父親が旅館の仕事で忙しく、ゆっくり過ごす時間は無かった。 「タケシ。腹減ったな。飯食ってくぞ!時間も無い…